毎年夏に宮古島市文化協会主催の恒例の方言大会が開かれます。この浜川平和(のどか)さんの池間島の民話暗唱は、第22回の方言大会のアトラクションとして方言大会の大会の後に行われました。
平和さんは池間小学校の2年生でしたが、ちょうどその学年の担任の先生が指導をし、家ではお母さんやお父さんに手伝ってもらい、一生懸命この民話を覚えたそうです。担任の先生、平成27年当時の池間小学校の先生、平和ちゃんのお母さんとお父さんにお目にかかりそのときの様子を聞きました。今回、平和ちゃんとお母さんの許可を得て、宮古島市文化協会のご理解のもと、映像をウェブサイトで公開することができました。
また、この民話については、もともと池間島(2005年から宮古島市としてに6つの島が一つの市に編成されたが池間島もそのうち一番北に位置する島)の民話(ゆがたい)で、日本語に訳されて残っていた民話を、小学校で子どもたちの暗唱用のために、当時、池間小学校の先生であった平良吉嗣先生が宮古語の池間方言に訳し直したと聞きました。今回、平良芳嗣先生の許可を得て、字幕に先生が訳されたものをつけさせてもらいました。
『ミハギバトゥとガラサのゆがたい』
むかし、目の悪い鳩とカラスは、とても仲の良いともだちでした。
ある日のこと、ふたりは、池間島の遠見台で、遊んでいました。そのとき、目の悪い鳩が仲間グスの浜に、とても大きな魚が、あがっているのを見つけました。「わーすごい、とても大きな、魚が、いるよー。」と言って、この魚のところに飛んでいき、「おいしそうな魚だなー、どこから食べようかなー」と、うーろ、うーろとしているとカラスが飛んできて「おーいミハギバトゥとてもおいしそうな魚だねー、私にも少しだけ分けてくれないか」と、言いました。だけど、目の悪い鳩は、「いやだよ、これはぼくのものだから、だれにもあげれないよ」と、言いました。「えーなんてことだ、この鳩は、ほんとに困った鳩だよ、私たちは、仲のいい、ともだちでしょう。こういう物は、兄さんから、食べるものじゃないかなー」「はい、ミハギバトゥあんたはいくつかね」「え―ぼく、僕はね七つだよ」と、目の悪い鳩がいばって言いました。「えーたったの七つだけ、私がいくつ兄さんかわからんもんだ」「はい、ミハギバトゥ私は二十になるんだよ」「じゃー私から食べるよー、ミハギバトゥあんたは向こうに行って休んでいなさい」と、言ってカラスから食べることになり食べ始めてしまいました。
目の悪い鳩はどうしようもないので、カラスが食べ終わるまで、池間島のバリナウダキに行って休んでおこうと飛んで行きました。
そうして、しばらく休んでいると、魚の身を腹いっぱいになるまで食べたカラスが、バリナウダキに飛んできました。そして、とてもうれしそうな顔をして、「はい、ミハギバトゥ、ありがとうね、とてもおいしかったよ、あなたの分もちゃんと残してきたからね」と言いました。すると、目の悪い鳩は、あわてて仲間グスの浜に飛んでいきました。
だけど、かわいそうに、ここには身はぜーんぶ食べられた大きな魚の頭の骨だけがありました。
かわいそうに目の悪い鳩には身のない頭の骨がカラスの言った通りおいしそうに大きく見えました。「私の分は大きいぞ、カラスはとてもいいともだちだ」と喜んで、身のない頭の骨をガウとくわえて、バリナウダキに飛んでいきました。
目の悪い鳩が、カラスの知恵に負けたという話でした。