2017年~2018年に私が池間島に泊まっていたときに、盛男さんに頼んで民話を読んでもらいました。それから、民話に出てくる池間の巣出水(すでぃみず)の井戸、他にも盛男さんが若き日に遊んだ浜辺や池間の歴史に関わる場所にも案内してもらいました。飄々と、今を生きているのに過去の風景も同時に見ているような独特の雰囲気をもっている盛男さんは、池間島のかつての賑わいのあった時代とそうではなくなった現在とを実は毎日行き来しているのかもしれません。
伊良波盛男(いらはもりお)
沖縄県宮古島市池間島出身
詩人・池間郷土学研究所代表研究員
1942年(昭和17年)沖縄県宮古島市の池間島に生まれる。
琉球政府立宮古水産苦闘学校機関科卒業
早稲田大学オープンカレッジで4年間学ぶ。
著作: 詩集、小説、民族誌は国立国会図書館所蔵28件
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/search?searchCode=SIMPLE&lang=jp&keyword=%E4%BC%8A%E8%89%AF%E6%B3%A2%E7%9B%9B%E7%94%B7
近年では、(2010)『池間島の地名・池間島の聖地』、(2011)『わが池間島』などはグーグルで引くとその書評を読むことができます。
『ひばりと巣出水』
昔、昔、大昔のはなしだよ。今では小さいほうの鳥に属する雲雀は、昔は大きな鳥だったようです。ある日、天の神さまがひばりと蛇に「巣出水を持って天に昇って来るように」と言いつけたそうです。「はい、かしこまりました」と大事な巣出水を首にぶらさげ天に向かいました。ところが、うまく飛べない蛇は、途中でひばりの足に絡みつきました。その拍子にひばりは巣出水を蛇に浴びせてしまったのです。
その様子を見ていた神さまは怒ってしまいました。「お前は蛇ほどにも知恵がないのか、蛇はこれから脱皮しながら永遠に生き続けるだろう。お前は大変な罪を犯した、罰として締め上げてやる」と言い、ひばりはとうとう小さな鳥にされてしまいました。今では、小さな体で必死に天に向かって飛ぶひばりを「揚げ雲雀」と呼び、俳句の季語にもなっています。
それでも、ひばりは昔、神の使いだったので、鳥の中でも一番知恵があり、巣作りもうまいといわれています。ススキの穂の白い綿を取ってきて丈夫な巣を作ることで知られ、その巣の戸口は北風が吹けば南に向き、南風が吹けば北へ向き、よく考えられています。
ひばりが、小さくなったのは、そんなことがあったからだよ。
(話者/前泊メガ=平良池間島)