『ヤースサァドゥ ンマサ(空腹が何よりのごちそう)』
昔、キサマ按司の畑ではお米がよく取れるのに、クバカ按司の畑では粟とか豆、キビなどの雑穀しか取れない痩せた土地柄でした。それをいいことに、キサマ按司は、いつもお米の弁当をクバカ按司に見せびらかし、「お前はよくそんな雑穀の弁当を食べられるな」とばかにするのでした。
ある夜、二人は海に舟で遊びに行くことになり、お互い弁当を準備することにしました。キサマ按司はお米の弁当を1日分持ってきました。クバカ按司は海に出ると何があるか分からないので、1週間分のキビやアズキなどの弁当を持っていくことにしました。海に出たら、おかずを捕った魚やタコなどでまかないました。
やはり、一日では帰れず、二人は漁を続けていました。余裕を持って食糧を持参したクバカ按司は、一人でおいしそうに雑穀のおにぎりを食べていました。それを見たキサマ按司は「君はよくそうして一人で食べられるね。わしにも分けてやろうとは思わんか」と言いました。「とんでもない、こんな雑穀をあなたに食べさせるなんて失礼ですよ」とクバカ按司が言うとキサマ按司は「悪かった、これからそう言わないから、少しでも分けてくれ」と泣きついたそうです。
ヤースサドゥ ンマサ(ひもじさがおいしさ)。人は、お腹が空いていれば何だって美味しいと食べるもんだってさ。
(話者/洲鎌茂一=下地)