『継子の毒入り弁当』
昔、あるところに貧しい親子3人がつつましく暮らしていました。ある晩、父親は息子に「わしらは財産も少ないし、働いても働いてもお前を楽にすることはできない。お前の友だちなどは、もう結婚して幸せに暮らしているというのに、お前のところへ来る嫁もいない。このままではどうしようもないので、お前は、山奥で炭を焼いているおじさんのところへ行って、そこで働いて自分の身を立てなさい」と、おじさんに手紙を書いて行かせました。
炭焼きおじさんのところへ行った息子は、そこで一生懸命働きました。幾年か過ぎたある日、炭焼き小屋の側で一人の娘が倒れていました。どうやら病を患っているようで、息子は放っておけず、娘を背負って家まで送ってあげました。娘の家族は大変喜び、「娘を助けてくれてありがとう」と息子の手を握りお礼を言いました。
それから幾日か過ぎたある夜、息子の家の戸をたたく者がありました。娘の両親がごちそうをいっぱいこさえて訪ねて来たのです。「おかげで、娘も元気になりました。もしよかったら、あなたの嫁にしてやってください」と言うのです。息子は、まだそんな身分ではないと断りますが、ぜひにと勧められ、二人は結婚することになりました。
そのうち、二人の間には、かわいい女の子が生まれました。名を小雪姫と名付けかわいがりました。ところが元々体の弱かった嫁はしばらくして亡くなってしまいました。心の優しい父親は、かわいい小雪姫のために新しい母親を迎えました。
ところが、この継母は意地の悪い人だったので、小雪姫が学校へ行くにも弁当を作ってあげることはしませんでした。この子の先生は、いつも弁当のない小雪姫のために自分の弁当や友だちの弁当を分け与えていました。
そんなある日、小雪姫が珍しく弁当を持ってきて、はしゃいでいるのを見た先生は、少し不審に思い小雪姫の弁当を少し分けて近くにいた犬に食べさせてみました。すると、犬は大変苦しみ死んでしまいました。先生は驚いて弁当をみんな棄ててしまいました。
先生は、うわさには聞いていたが、すごいことをする母親だ、このまま小雪姫を家に帰すわけにはいかないと、娘を引き取り育てたということです。
(話者/奥松マツ=平良)