﹃カエルの皮かわをかぶった娘むすめ﹄
昔むかし、フナタ︵蛙かえる︶やパウ︵蛇へび︶も人にん間げんの姿すがたになったりしていました。
ある日ひのこと、小ちいさな赤あかいパウが大おおきなフナタを呑のみ込こもうとしているのを、通とおりかかったおじいさんがみかけました。﹁パウ、そのフナタを呑のむのはよせ、わしの言いうことを聞きいてくれたら、うちにいる3人にん娘むすめのうち、一ひとり人をお前まえの嫁よめにやってもいいよ﹂と言いいました。呑のみかけたパウは、それならと、フナタを放はなしてやりました。
約やく束そくの日ひ、パウは人にん間げんの姿すがたになってやってきましたが、娘むすめたちは父ちち親おやからその話はなしを聞きいていたので、長ちょう女じょと次じ女じょは﹁だれがパウの嫁よめになど﹂と見み向むきもしません。三さん女じょは﹁お父とうさんがそう約やく束そくしたのなら、私わたしが行いきます﹂と言いいました。そして、縫ぬい針ばりと糸いとをたくさん持もってパウに付ついていきました。先さきに歩あるくパウに娘むすめは針はりを突つき刺さし、糸いとでぐるぐる巻まきにして殺ころしてしまいました。
帰かえり道みちで、助けたすられたフナタが待まち構かまえていて﹁美うつくしい娘むすめが一ひとり人で歩あるくのは危あぶないのでこれをかぶっていきなさい﹂と言いって、フナタの皮かわをあげました。しばらく行いくと、3人にんの若わか者ものがやってきていたずらをしよう
としましたが、あまりの醜みにくさに逃にげていってしまいました。
また歩あるいて行いくと、山やまの中なかに1軒けんの大おおきな立りっ派ぱな家いえがありました。﹁ここで私わたしを使つかってください﹂と頼たのむと、ちょうど風ふ呂ろ焚たきがいないからと雇やとってくれました。そこでは、美うつくしい娘むすめさんたちが数すう人にん働はたらいていました。そして、その中なかから一ひとり人息むす子この嫁よめを選えらぼうとしていました。
風ふ呂ろ焚たきの娘むすめは、昼ひる間まはフナタの皮かわをかぶっていましたが、夜よるになると脱ぬぎました。あるとき、最さい後ごに風ふ呂ろに入はいった娘むすめはフナタの皮かわを脱ぬいで入はいろうとしていました。たまたま、そこを通とおりかかった一ひとり人息むす子こが見みて、うちにこんな美うつくしい娘むすめがいたのかと驚おどろきました。
しばらくして息むす子こは重おもい病びょう気きにかかり、使つかいの女おんなたちが変かわるがわる食しょく事じを運はこびました。でも、どれも口くちにせず、弱よわっていきましたが、ある日ひ、風ふ呂ろ焚たきの女おんなの持もってきた食しょく事じは喜よろこんで全ぜん部ぶ食たべました。両りょう親しんは不ふ思し議ぎに思おもい、﹁一いっ体たいどうしたことだ﹂と聞きくと、﹁ぼくはあの娘むすめと結けっ婚こんしたい﹂というので、ますますあきれました。でも、病びょう気きの息むす子こがそうしたいと言いうのなら反はん対たいする訳わけにもいかないと二ふたり人の結けっ婚こんを許ゆるしてやりました。
結けっ婚こん式しきの日ひ、風ふ呂ろ焚たきはフナタの皮かわを脱ぬいで着き飾かざり、たいそう美うつくしくなったので、両りょう親しんは二ふた度たびびっくり、周まわりの人ひとたちも驚おどろいてしまいました。その後ご、二ふたり人は子こ宝だからにも恵めぐまれ大たい変へん豊ゆたかに暮くらすことが出で来きたということです。
︵話わ者しゃ/砂すな川かわカニメガ︶