『きつねの借金とり』
昔ね、親が亡くなって、兄弟だけ二人で住んでおったって。兄は勉強が好きなのに、弟は遊んでばかりいました。兄は「少しは勉強しないと大人になって大変だよ」と忠告しても、弟は聞く耳を持たず、隣のおじいやおばあの所に行って、ゆがたいを聞いたりしていました。兄はもうあきれて何も言う気がしなくなっていました。
ある日、キツネがお役人に化けて立派な鞍をかけた馬のひく金馬車に乗ってやってきました。そして、兄に「おい、君の両親は私らに借金を残したまま死んでしまったようだな。その借金を君に払ってもらおう。いいな、今度来るまで、お金を準備しておくんだよ」と言うと、さっさと行ってしまいました。
兄はびっくり、どうしていいかわかりません。弟が帰ってきたので、そのことを話すと、「そんなこと、心配いらないさ」とケロッとしています。兄は「だって、二人の生活だけでも大変なのに、これからどうやっていくんだ」と言うと、「大丈夫、ぼくにまかせてよ」と言ってさっさと出て行きました。しばらくすると、猫を何匹も集めて来て飼い始めたのです。兄は何が何だかわからず、弟のすることを首をかしげて見ていました。
そうしているうちに、約束の期限が来て、お役人が家来をたくさん従えてやってきました。弟はちっとも物怖じせず「よくいらっしゃいました」と涼しい顔をしています。兄はおどおどしながら側にいたが、弟は落ち着いて兄にそろばんを頼むと、借金の計算を始めさせました。弟はお役人に「これでよろしいですか」と尋ね、「少しお待ちください」と言って、裏座に入っていきました。そして、猫のたくさん入った箱を持ってきて差し出しました。
お役人に化けていたキツネたちは、びっくり仰天、「コーン、コーン」と鳴いて一目散に山へ逃げていきました。弟はちゃんとお役人の正体を見抜いていたようです。それから二人はキツネたちが乗ってきた馬をもらって、それまでよりも豊かに暮らしました。マーンティービャーヤー(ほんとかな?)
(話者/佐和田カニ=伊良部)