『ねずみとやどかり』
昔ね、山の中でねずみとやどかりがばったり出会ったそうです。でもお互いに相手の名前を知りません。ねずみがやどかりに向かって、
「あんたはだーれ?名前を教えて」と話しかけると、やどかりは、
「ぼくの名前はカサカサと云うのさ、今度はきみの名前を教えてくれよ」
「わたしの名前はコラマタよ」と、ねずみが答えました。
「おたがい、おかしな名前だね」二人は吹き出しました。そこで二人は相手の名前が本当かどうか確かめようということになりました。山の中へ入っていくと、そこには枯葉がたくさんあって、やどかりがその上を重たいからを引きずりながら歩くと、枯葉が「カサカサ、カサカサ」と音を立てます。
「ほらね、木の葉もわたしをカサカサと呼んでいるでしょう」と言うと、ねずみは、「なるほど」とうなずきました。
「今度はわたしの名前を確かめに行きましょう」とねずみはやどかりを誘いました。人家に入ったねずみは、たんすとか押入れの角をガリガリかじり始めました。するとそこへ、その家のご主人がやってきて「コラマタ!」と大声で怒鳴っています。「ほらね、ぼくの名前もコラマタに違いないでしょう」と言って、お互いにうなずきあって納得したということです。
(話者/徳嶺春洋=多良間島)