4) しゃべるヤマガメ

『しゃべるヤマガメ』

むかしね、やさしくてあたまおとうと意地いじわるあに二人ふたり兄弟きょうだいがいました。ある日、おとうとやまたきぎりに行くと、「母(ンマ)ヌ孝行こうこう、父(アサ)ヌ孝行こうこう、うりっしっしい(さあさ、おかあさん孝行こうこう、おとうさん孝行こうこう、しましょうね)」とゃべるヤマガメにいました。おとうとはたまげましたが、おもしろいものをつけたといえかえりました。あににそのことをはなすと、「そんなばかなことがあるか」と相手あいてにしませんでした。

そのうち、うわさが村中むらじゅうつたわり、物見ものみだかい人ひとたちは押しかけてて、「かめがしゃべるってほんとう?かせて、かせて」と大変たいへんさわぎになりました。おとうとは「おやす御用ごようさ、いたあとでぼくのしいものなんでもくれるか」と約束やくそくして、ヤマガメをれてきて「さぁ、はなすんだ」とあたまをコツンとたたくと「はは孝行こうこうちち孝行こうこう…」。みんなはびっくり、「うわさは本当ほんとうだったんだ」とって、おとうと約束やくそくものをあげました。

それをていたあには、金儲かねもうけをしようとおもい、勝手かってかめし、ひとおお広場ひろばにやってきました。「これから、このかめちゃんが人間にんげん言葉ことばをしゃべるよー」とみんなをさそい、「本当ほんとうなら、ぼくになんでもくれるか」とって約束やくそくけ「さぁ、かめきち、みんなにはなしてみろ」とかしました。「・・・」かめくびをひっこめたまま、なにもしゃべろうとはしません。あにはあわてて「これ!はやくしゃべらんか」と怒鳴どなると、かめはますますくび無言むごんのままです。

あつまったみんなは「な~んだ、やっぱりな~」とって呆あきれてかえりました。なかにはだまされたとあにいしげてものもいました。にいさんは、くやしくてヤマガメをおもいっきりげつけ甲羅こうらやまててかえりました。そうとはしらないおとうとは、「にいさん、ぼくのヤマガメかえして」とうと、「あんなもん、やまなかててきたさ」とうので、きながらさがしにき、んでいるヤマガメをつけ、おはかつくって丁寧ていねいほうむりました。

しばらくして、おとうとがそこへってみると、おはかうえら天てんまでとどきそうなおおきなたけえていました。「あー、ぼくのヤマガメのたけだ」ときかかえると、ユッサ、ユッサれ、こめがザーザーってきました。それはてん米蔵こめぐらを竹がやぶったためでした。おとうと面白おもしろくなって、村中むらじゅうのむしろをりてきてこめあつめ、大金持おおがねもちになりました。

それをていたあには「それじゃ、わしも」と、べつのところにかめ甲羅こうらめておはかつくりました。しばらくして、そこにもおおきなたけえてきました。「しめしめ」あには、たけをユッサ、ユッサらしました。するとふん汚物おぶつちてきました。どうやらそのたけは、てん便所べんじょやぶってしまったようです。「アイジャー(ありゃー)」あにし、弟につ当たりしました。

あにかんがえました。「こいつがいるとどうもうまくいかない、なんとかしよう」と、おとうとふくろに入れてうみてることにしました。途中とちゅうで、小用しょうようをもよおし、ふくろみちそばろしてしげみのなかはいってきました。そこへちょうど、うみかえりにとおりかかった漁師りょうしがいて、ふくろに入ったおとうと不思議ふしぎおもい、「うわぁ、のーゆがしーうー(あんたは何をしているの)」とたずねました。おとうとは「このなかは、なぜかおなかかないし、またとても気持きもちがいいさー」とうと、漁師りょうしは「まずがーてぃ、ばんまいぱっしみゅー(まずーと、わしもはいってみよう)」とって、っていたさかなふくろえることにしました。

そうとはらないあには、小用しょうようから帰って漁師りょうしの入ったふくろかついでってうみてました。「やれやれ、これで邪魔者じゃまものはいなくなった」とよろこんでいえかえると、「にいさん、おかえり、さかなけたよ」とおとうとさきかえってきていました。「おまえ、どこからさかなってたんだ」とくと「にいさん、だめじゃない、もっとふかいところにげてくれたら、もっとおおきなさかなれたのに」とわらっています。「まいった、こいつにはてない」とって、降参こうさんしたそうです。

話者わしゃ佐和田さわだカニさん=伊良部いらぶ

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