『舌切りすずめ』
昔、じいさんとばあさんが暮らしていました。二人には子どもがいませんでした。
ある日、じいさんが朝早く畑を見回りに行くとすずめが一羽遊んでいました。じいさんは、子どもの代わりにかわいがってあげようと、家に連れ帰りました。
じいさんが畑に出かけたあと、ばあさんは着物にのりを入れようと思い、たるにのりを作り、「隣にたらいを借りに行くで、こののりをたべちゃいかんよ」とすずめに言い聞かせて出かけました。ところが帰ってくると、たるの中ののりはみんな食べられていました。「アガイー(あらー)、あれだけ言ったのにすずめのやつ、みんな食べおってからに」ばあさんは大変怒りました。
「お前のようなやつは、養っても仕方がない」とすずめの舌をはさみでチャンと切って放しました。畑から帰ったじいさんは、すずめの姿がないので、「すずめはどうした?」と聞くとばあさんは「あいつはろくでなしだよ、私の留守に、作っておいたのりを全部食べちまった。腹が立つから舌を切って放したさ」
じいさんは、泣き泣きすずめを探しに行きましたが、見つかりません。三日経って畑に行くと、近くの山にチチチチと鳴くすずめを見つけ、じいさんは「お前、そんなところにいたのか、さぁ、家に帰ろう」と言うと、「いやです、ばあさんに殺されてしまう」と言うので「それは残念だ、わしは、お前のことが心配で夜も寝れなかったのに」と言うと、すずめは、「そうか、一緒に帰ることはできないが、じいさんは私に親切にしてくれたのでお礼にこの宝物をあげましょう」と言って、大きな箱と小さな箱を差し出し、どちらか選ぶように言いました。
じいさんは、大きな箱は重そうなので小さな箱を選んで帰りました。家に帰ってからばあさんと箱を開けると、宝物がぎっしり入っていました。ばあさんは「あんたはばかだね、大きな箱ならもっと宝がもらえたのに」とじいさんをなじり、「今度は私がもらってくるさ」と言って山に出かけました。ばあさんは、当然大きな箱をもらって帰ろうとすると、すずめが「これは途中で開けてはなりません、家に帰ってから開けるように」と忠告するが、ばあさんは構わず、よいしょ、よいしょと重い箱を引きずりながら帰りました。
途中であまりにも重いので、一体何が入っているんだろうと少し開けてみました。出てきたのは蛇の大群でした。ばあさんは腰を抜かしそうになりながらその場を離れ、泣きながら帰りました。じいさんは「ほら見ろ、欲張るからそんな目に会うんだ」と言ってばあさんをたしなめました。それからばあさんも心を入れ替えたということです。
(話者/花城カニメガ=平良)