『南京虫とノミとシラミの話』
南京虫とシラミとノミの三人はとても仲のいい友だちでした。
ある日、三人は夜のイザリ(潮干狩り)に出かけました。ところが、それぞれの足の速さが違う。そこで、三人は、役割を分担しました。足の速いノミは、魚や貝を採る係り、南京虫はそれを集めるかご持ち、シラミは松明を持つ役になりました。
ノミは足が速いので、みんなの先に歩いていきました。しばらくすると、「おーい、魚を突いたぞー、急いでかごを持って来てくれー」と叫んでいます。ところが、南京虫は、「無理いうなー、おまえの後は追えんから、おまえが来て取ればいいー」とふてくされています。「あーあ、やってられないよ」とプリプリしながらやってきたノミは、南京虫からかごを奪い取り、思いっきり、わらじの足で踏みつけました。
「いたーい、いたいよー」といって、南京虫はペシャンコになりました。「悔しかったら、おれに負けないように歩くことだな」ノミは言い捨てて、さっさと歩いていってしまいました。「ばかやろー、ますます歩けなくなったじゃないか」南京虫は悔しくて悪態をつきました。
ノミは、今度はシラミに向かって、「おーい、俺の松明が燃え尽きそうだよー、おまえの松明を持って来てくれー」と叫ぶと、「これは重い、重い。なかなか前に進まぬ。お前が来て取れー」とわめいている。「どうしようもない奴らだ、使いものにならん」といってシラミのところへ行き、短くなった松明で、シラミの胸元をグフーと突いたそうです。それからってさ、しらみの胸元が黒くなったのは。
三人は、夜通し喧嘩をして、家に帰ってからもノミは、シラミと南京虫に「おまえたちは、おれを怒らせてばかりいたから魚も分けてやらないよ」といってむくれていました。そこで、シラミは南京虫に「あいつは、あまりにも勝手過ぎる。おれは胸元が黒くなるまで焼かれ、きみもペチャンコになるまで踏みつけられたのに、そのわびどころか、おれたちを怒ってばかりいる。何とか、二人で力を合わせ、ギャフンと言わせる方法はないものか」と相談しました。
二人は、ノミの弱点を見つけ、シラミが前の足を、南京虫が頭をつかまえてグーと前の方へ押し倒したものだから、ノミは背中がパキンと折れて、今のような曲がった背中になり、ピョンピョン飛び回るようになったという話です。
(話者/前里財義=城辺)