『ばあさんの知恵(うばすてやま)』
昔、年老いたばあさんと賢い孫が一緒に暮らしていました。そのころは、年を取ると山に連れて行って捨てるという習慣がありました。この子も年老いたばあさんを抱えて周りの人たちには「そろそろ考えないといけないよ」と言われていました。
でも子どもは「困ったなぁ、ぼくを育ててくれたばあさんを捨てることなんてできないよ」と言って悩んでいました。子どもは知恵を働かせ、ばあさんを山に連れて行ったことにして床下に隠し、食べ物を与え面倒をみることにしました。
ある日、村の役人からその子に、ある難題を解くようにという命令がきました。「おい、そこの子、灰で縄をなえるか、灰の縄をなって出しなさい」と言って帰っていきました。「どうしよう」子どもは困りましたが、「そうだ、おばあに聞こう」と言って、床下の老婆に質問しました。「何を言っているんじゃ、そんなことは簡単じゃ、燃えにくい板の上に縄で円を描き、それを燃やせばいいのさ」と教えてくれました。
さっそく、その子はおばあの言われた通りにして、灰の縄を作り、役人のところへもって行きました。役人は驚き、「不思議な知恵のある子だ、でも、お前一人の知恵ではあるまい?申してみよ」と言われ、子どもは「実は…」といって、隠してあるおばあに教えてもらったことを正直に話しました。役人は、「年よりは、確かに知恵があるのぉー、いやー年寄りは宝だ、大事にせにゃーいかん」と言って、それから山に捨てることはしなくなったという話じゃ。
(話者/塩川ヒデ子)