『かんざしとトンボ』
昔、父親と継母、男の子の3人家族がありました。ところが、継母は心根の悪い人で、いつも継子を何とか企んでやろうと考えていたようです。ある日、継母はかんざしにトンボを縛って継子のところへやってきました。継子はそれが継母の企みとは知らずにトンボを捕まえようとしました。継母は「この子はわしを手込めにしようとしているさー」と父親に言いつけました。
父親は最初「何をばかなことを言っているんだ、こんな小さな子がそんなことするはずないじゃないか」と、相手にしなかったが、何度も企んで大騒ぎする継母の策略にとうとう父親も息子のいたずらを信じるようになりました。そしてある日、二人は息子を亡き者にしようと穴を掘らせることにしました。
両親の企みとは知らず、息子はどんどん穴を掘っていきました。すると父親が上から平らな石をかぶせたので、息子はそこでようやく二人の企みに気がつきました。それならと、息子は横穴を掘り始めました。
どんどん掘っていくうちに楽土に出ました。息子は正直者だったので神さまや鳥たちも手伝って田んぼをつくり、そこに稲を植えました。米はたわわに実り、収穫時期になると、また鳥たちが手伝ってくれました。こうして息子は、楽土で豊かに暮らしたということです。
(話者/平良カメ)