『住屋うたきの言い伝え』
昔、根間の里に母親に早く死なれて継母に育てられている7歳の男の子がいました。ある日、継母が赤豆を煮ていました。香りに誘われて赤豆が欲しいと男の子が言うと、いつも疎ましく思っている継母は、「包む用のビヴュガッサ(クワズイモ)が住屋アブ(洞窟)の側に生い茂っているのでそれを摘んで来なさい」と言いました。
男の子は、木の生い茂る住屋アブに行ってビヴュガッサの葉を摘もうとして足を踏みはずし、底知れぬアブに真っ逆さま。ところが、途中で蔓に引っかかり宙吊りになりました。男の子は7夜泣き明かしましたが、父親は助けるどころか、泣き声がうるさいと蔓を断ち切って自分の子を奈落の底へ突き落としました。
男の子は、アブを通り抜け地の底の根入り屋の国あろうの国へと入っていきました。根入り屋の神は男の子から事情を聴き、君が心の善い者であるかどうかを確かめ、もしそうであるならば、現世に返してあげようと言いました。そして、神は荒々しい赤牛を手なずけることができるかどうかを試しましたが、男の子はすぐに慣れ親しみました。
神は「君は心のきれいな子だ、もう一度、現世に戻り幸せになりなさい」と言って返しました。男の子は住屋山に入り「根入り屋下りあろう踏む真主」といって崇められました。また、神となった男の子は自分を奈落の底へ落とした父親のことをいたく悲しみ、すべての男を呪うようになったので、この御嶽に男が参拝してはならないという言い伝えがあります。今では、根間内会の里御嶽と学問の神様として親しまれています。
(話者不明)