『あわもりの始まり』
昔ね、米のよくとれる田んぼの片隅に、大きな木があったそうだ。その木の上にすずめたちが米の穂をくわえて行っては突ついて食べていました。そのうちにこぼした米粒が木の穴に集まってたまり、雨が降るたびにふやけてこうじが生えていたそうです。そしてまた雨が降ってその穴にたまると、それがだんだんもろみに変わっていきました。
ある日、通りすがりの農夫が、何かを突つきながら楽しそうにしているすずめたちの様子を見て、近寄ってみると木の穴にもろみが出来ていたそうです。農夫は指を入れて味見をしました。何とも不思議な味がするので、これは飲み物にできるかもしれないと思って家に持ち帰りました。
農夫はすずめたちの行いをしっかり観察し、これなら生麦でも出来るかもしれないと麦をつけておきこうじを立たせ、こうじから泡が沸いたときに、煮た芋をよくこね混ぜて神酒を造りました。お正月にもこれをお客さんに飲ませると、とても喜んでくれました。
それからは、よくとれる粟でもこうじが出来るかもしれないと考え粟のこうじを作ったことから、誰でもお酒が造れるようになりました。粟から造った酒なので、「あわもり」と名付けられました。こうして酒造りははじまったようです。
(話者/佐和田カニさん=伊良部島))