『かえるになった息子』
昔、あまのじゃくで乱暴者の息子がいたそうだ。親の言うことはまったく聞かず、それどころかいつも反対のことばかりしておった。
「クィシィジョーブン」(これでいいよ)と言うと、
「アラン、カイガドゥマス」(ちがう、あれがいい)と言い、「アツカ、ジョブンサイ」(そしたら、それでいいんじゃない)と言うと、今度は「アンチャーアランユー」(そうじゃないよー)といった具合で、どうにもやること、なすこと、すべて反対しないと気が済まなかったようだ。
親は考えました。「この子は、わしらが死んでもおそらく反対のことをするだろうから、逆のことを言ったほうがいいのかもしれない」と思いました。ある日、息子を呼んで「わしらは老い先みじかい。いつお迎えが来てもおかしくないから、大事な話をしておこう。お墓は川の側に造ってほしい、頼んだよ」と言いました。
それからまもなくして、本当に二人はあの世に行ってしまいました。息子はこのときばかりは嘆き悲しんで、親の遺言どおり、墓を山のふもとの川の側に造りました。ところが、息子は雨が降るたびに気がきでなりません。「お父とお母が流されてしまう」心配で夜も眠れず墓の番をしていました。そして、とうとうかえるになってしまいました。
今でも、雨が降ると川の側で「わしのお父はどこー、お母はどこー」とゲロゲロ鳴いているんだってさ。
(話者/前里財儀=城辺)