『みはぎバトの話』
ンキャーン(昔)つぁ、みはぎバトとカラスは仲の良い友だちだったちゃ。ある日、みはぎバトが池間島のバリナウ岳にある遠見台のあたりで遊んでいると、仲間越の浜辺に大きな魚が打ち上げられているのが見えたさ。
「やったー、大きな魚のごちそうだ」と、喜びいさんで魚のところへ飛んで行ったさ。
「さて、どこから食べようかなー」と魚の周りをうろうろしていると、
「やぁ、アグ(友)、おいしそうな魚だなぁ、おれにも少し分けてくれんか」と、仲良しのカラスが声をかけてきたと。
「いやだよ、これはぼくが見つけたんだからね」
「おれたち友だちだろう、ケチケチすんなよ。そうだ、いい方法がある。年の順に食べるってのはどうだ。ところでお前はいくつだ」
「ぼくかい、ぼくは七つだよ」と、いばって言ったさ。カラスは、
「なぁんだ、たったの七つかい、おれは二十歳だぞ、それならおれが先だね」
と言ってカラスはおいしそうに肉をつつきはじめた。みはぎバトは、カラスが食べ終えるのを待って、しぶしぶバリナウ岳の遠見台で休むことにした。
しばらくすると、カラスが満足そうな顔をしてやってきた。
「マイフカ(ありがとう)、とてもおいしかったよ、君の分はちゃんと残してきたからね」と言うので、急いで行ってみると大きな頭と骨だけが残っていた。みはぎバトはカラスの知恵に負けてしまったということだ。
(話者/前泊徳正=池間島)