『ウンタラの主の話』
昔ね、ウンタラの主という、力持ちで頭のいい、すべてをかね備えた男がいました。
ところが、この島には昔から鬼が住んでいて村人を苦しめていました。そこで、ウンタラの主は「よし、ぼくがその鬼とやらをやっつけてやろう」と思い立ち、出発しようとすると、そこへ小鳥が飛んできて、「ピーも一緒に連れて行ってくれー」と鳴いたそうだから、「よしよし、ついてくるがいい」といって歩き出しました。
木刀片手に歩いていると、今度はハチが現れ「ブンもお供させてくれー」とうなくもんだから、「いいだろう」といって歩いていると、今度はムカデが出てきて、「いいなぁ、おれもアグ(友)にしてくれんかー」と頼むので、心の広いウンタラの主は「みーんな、まとめてついて来い」と言うとジャッカ、ジャッカ歩き出した。それを見たアコウ木と臼も、「おもしろそうだから、ついて行こう」といって後をついてきたので妙な行列が出来てしまいました。
そうしているうちに、鬼の家に着きました。ちょうどいいことに、鬼は昼寝の真っ最中。「しめしめ」、ウンタラの主は、みんなを集めて作戦を練りました。「ヒソヒソ、ポソポソ…よし、決まった」。さっそく、作戦開始!まず初めに、ウンタラの主が、鬼の寝ている床下へもぐって、床の隙間から木刀でゆっくり、グッファ、グッファと突きました。すると、鬼はモゾモゾと動き出し、「今日はいやにノミが多いのぉ」といいながら、台所へノミ退治に降りて行きました。鬼はかまどで、火を付けようとすると、灰の中に隠れていた小鳥はパタパターと飛び出したから、びっくり仰天、「アガイタンディーあれーー」、目にも灰が入ってしまいました。鬼は、目を洗うために水がめのところへ行ってひしゃくを取ると、それにへばりついていたムカデが鬼の腕をチクリ!「ヒヤーッ」、あわてた鬼は庭へ飛び出しました。すると、今度は戸口の柱に止まっていたハチが飛んできて、体中、チクリ、チクリー。
「アガー、アガー(いたい、いたい)」。庭中めちゃめちゃに走り回っているところへ、アコウ木が足をひっかけ倒しました。その上に臼がドスーン。ぐったりした鬼に、ウンタラヌ主は、ここぞとばかり、木刀で頭をメーン。鬼はとうとう死んでしまいました。
バンザーイ、バンザーイ。みんなは鬼の家の宝物をみんなもらって帰ってきました。そして、村も平和になったということです。
(話者/与那原カマド=池間島)